こんにちは。管理人のぽんぽこです。
ドラマ「無能の鷹」第2羽では、「優しい人」がテーマでした。
鳩山樹(井浦新)は、新入社員の鷹野ツメ子(菜々緒)にデータ入力を教えます。
ツメ子は、「クリック」や「アイコン」とは何かもわからない、マウスの使い方すら知らない、超初心者高齢者向けのパソコン教室と同じくらいの低レベルなのですが、鳩山は、何時間もかけて、辛抱強く一つ一つ教えています。
それだけでなく、鳩山は取引先からの無理な要望に関しても「優しい」がゆえに、他社が断るような難しいシステムを「その会社を助けられるのは僕たちだけなんだ。」と言って受注してしまい、開発部からは恨まれています。
そういう鳩山なので、ほかの社員が引き受けなかったツメ子の教育係を押し付けられたわけです。
鶸田くんはドラマの中で、職場で「優しい人が損をするのが会社」と言っていますが、本当に損をするのでしょうか?
今回は、「優しい人」とはどういう人なのか、そして、本当に優しい人とはどういう人なのかについて、考えてみたいと思います。
職場で遭遇した優しい2人
周囲に気を遣って八方よしとしたいタイプ
エピソード
同じグループのママさん社員のGさん。とても優しく、周囲のみんなに気配りをします。そんなGさんは、誰にでも好かれ、もちろん敵を作るようなことはいたしません。頼まれたことに対しても、よっぽどのことがない限り断りません。
自分を多少犠牲にしても、同僚の仕事が大変だと思うと、多少無理しても引き受けてしまうタイプです。
ある日、お得意先から「〇〇してほしい。」という依頼が来ました。
他部署にもまたがる問題だったので、社内の関連部署に対して「お得意様がこう言ってきたので、お願いできないか?」と話を持ち掛けます。
結局、何度かのやり取りの結果、お得意様はAプランを希望、自部署はBプランを推奨、他部署はCプランを提案ということになってしまいました。そのたびに、Gさんは、最初はお得意様からのプランA、他部署からの案が出てきたらプランCと、案が出てくるたびにプランAになったり、Cになったり、はたまたやっぱりプランBでないと難しいと行ったり来たりしています。
こうなると、もう調整がつきません。いつもは、他人の意見をすべて取り入れて調整するのがいつものGさんなのですが、今回は折り合いをつけることが出来ず、調整はストップしてしまいました。
問題点
まず一つ目の問題は、自分の考えがなかったことです。自分で考えずに、まずは他人の意見を聞くという姿勢から発生しています。
二つ目の問題は、議論を避けようとすることです。その根幹が「優しい」ということに起因しています。
今回は、自部署のプランBは法的にやらねばならないことが含まれていたため、プランBの内容は絶対にはずせません。しかし、それを言わずに他部署に対して依頼をしてしまったことから、他部署の提案と整合性が取れず調整不能に陥っています。
他部署はプランBがあることを知らないため、色々考えてくれた結果プランCを提案してきてくれました。結局、プランCは採用できなかったため、他部署の時間も奪ってしまったわけです。
これまでGさんは、いつも周囲の意見を聞いて妥協点を探り、折り合いをつけてきました。そのやり方が機能してきたことも多かったのだと思いますが、今回は、他部署やお得意先を優先して自部署を後回しにしたため、調整不可能な事態に陥ってしまったわけです。
優しいがゆえに、自分の意見をきちんと伝えられませんでした。
対策
社員Gさんは、まずはどうしたら一番良い選択が取れるのかを考えてから他部署へ相談をすべきでした。
今回の場合は法律に抵触しないようにすることを第一優先にし、それを踏まえたうえで、どうしたら一番良いプランになるのかを考え、自分で考えたプランBを他部署へ示して調整を行うべきだったのです。
つまり、この点だけは譲れないというポイントを明らかにし、自分自身で案を作ってから他部署へ提案すべきということです。
当たり前のことですが、仕事は、「なかよしこよし」ではなく、結果が求められます。仕事の上で意見を言い合うのはむしろ建設的であり、大いに意見を戦わせるべきです。でも、Gさんは、それが理解できていません。頭で分かっているのかもしれませんが、心で分かっていません。
または、「異なる意見をもっていたとしても、その人を嫌いになるということはない」ということが理解できていないのかもしれません。
「三方よし」でとった妥協点がいつも一番良い選択であることはありません。
Gさんの場合は、「まず初めに自分でその仕事の目的に合った結論を出してみる」という癖をつけていくことだと思います。
ただ、一朝一夕に性格が変わるものでもないので、なかなかハードルは高そうな気がします。
優しいのに厳しく見えてしまうタイプ
エピソード
係長のHさんは、周囲からは厳しい人と思われています。仕事もできて残業もバリバリこなします。テキパキと部下に指示を出し、判断を迅速にだしていく頑張り屋さんでもあります。テキパキしているがゆえに、前述のGさんと違い、ちょっと他人の気持ちに配慮が足りない部分はあるのかもしれません。
ある日、部下のIさんが長期の研修に参加したいと言ってきました。ちょうど仕事が増える時期にもかかわらず欠員もあり、ただでさえ仕事が回らなくなってきていたので、一人が抜けると他のメンバーにそのしわ寄せがかかります。
当然ですが、その長期研修に参加しながら、これまでと同じだけの仕事をこなすことはできません。H係長は、Iさんにその研修への参加は見送るようにと伝えました。
でも実は、H係長が参加を見送るように伝えたのは、別の理由がありました。
Iさんは、とても優秀な部下ですが、このところ、「自分は優秀で他人とは違う。周りから評価され、将来有望とみられている」ということを鼻にかけ、「特別扱いが当然」と思っているような態度が見えていたのです。
今、その理由として、(Iさんが)天狗になっていることを話しても無理だろうと判断したのです。
今のように人を見下すような態度をとっていれば、将来どこかで叩かれる時が来るだろう、それならば、今、ここで一旦は頭を冷やさせようと思ったのです。
自分は特別扱いされて当然と思っていたIさんは激怒しました。周囲にH係長の「いじめ」を言いふらしたのです。
H係長は一旦頭を冷やせば問題ないと考えていたことから、数日後に研修に参加することを許可したのです。
問題点と対策
H係長に問題はあったのでしょうか?
問題があるとすれば、伝え方の問題か、他人に対して厳しく見えていたということでしょうか。ぽんぽこには、どうしてもH係長に大きな問題があったようには思えないのです。
後日談
結局、Iさんは研修に参加し、他のグループ員はIさんの仕事を肩代わりしました。ただ、Iさんは自身が研修に参加しているため、周囲に手伝ってもらっているという意識も芽生えたため、みんなの負担にならないよう頑張りました。
その半年後、Iさんが言いふらしたH係長の「いじめ」の噂が広がってしまい、人事異動の時期にH係長は降格されてしまいました。
優しさが、自らの首を絞めてしまいました。確かに、ドラマでの通り優しい人が損をしていますね。
後から、H係長(その時は平社員になっていましたが)は、Iさんから聞いたそうです。「ダメと言われたときは酷い上司だと思ったけど、後から「研修に参加していい」と知ったときは、なんでだ?と思った」と。
H係長はIさんに当時そのような対応をした理由を話し、Iさんは納得したと聞いています。
ぽんぽこは、良かれと思ってやった結果が降格になったとしても、H係長がとった行動は、やはり間違ってなかったと思えて仕方ないのです。
「優しさ」って何だろう」
鷹野ツメ子の先輩社員の鳩山が同期の開発部長の鴫石郁(安藤玉恵)とクリニックの待合室で話をするシーンがありました。
徹底的に優しく優しく辛抱強くツメ子の指導をする鳩山に対し、鴫石は、「手とり足取り教えて、優しくすることが本当に彼女のためになると思う?」と問いかけます。そして、
「優しくするだけじゃ、人は育たないの。」と言い、去っていきます。
ぽんぽこも、まさにその通りだと思います。
これは、「株式会社刀」の日曜日の初耳学で、ゲストの森岡毅さんの言葉からの引用なのですが、本当に素晴らしい言葉なのでこちらに書き起こしたいと思います。
森岡さんは、目的によって違いますが、「もし単にみんなと楽しく過ごしたい」というのではなく、「結果を残したい」と考えるのであれば、
「本当に優しくあるためには、冷たくならなければならないときがある」
とおっしゃっています。
そして
「本当に正しいことをやりつづけたら、嫌われるものなんですよ。たとえ嫌われてもいい。むしろ正しいことをやり続けたら嫌われるものなのです。」
とおっしゃっています。
「本当に言わなくちゃいけないことを言わない人は、あるいはその場を和やかになんとなくまぁまぁと過ごさせるために優しいことしか言わない人は、本当は他人に優しいんじゃなくて、自分に優しい人です。自分が辛いのがいやだから。」
と。
「「自分が辛くない道を選びますか?」それとも「みんなのために自分が辛い道を選びますか?」、このどちらかです。後者の方がリーダーだと、僕は思うのです。」
ぐさーってきました。森岡さんの言葉は、いつも心に響きます。
Gさんは、人から嫌われるのが嫌だから、人ともめるのが嫌だから、なんとなく妥協点を探ってまぁるく収め、人に対して優しく接している。
これが森岡さんのおっしゃる「人にやさしいんじゃなくて、本当は自分に優しい。」ってことなのではないだろうかと思いました。
対して、H係長は、部下に厳しく接してしまったことで、逆にしっぺ返しを受けた。言わなくちゃいけないことを言葉ではない形で分かってもらいたかったために、自分が嫌われるように仕向けてしまった。その結果、やはり嫌われてしまった。
どっちがいいのかなーと考えてしまいます。一見、他人にやさしい人は、実は自分に優しいだけで、本当に優しい人は、実は嫌われてしまうのかもしれないですね。
強くないと、他人に優しくなんかなれないな、と強くと思いました。
ぽんぽこは、どっちの優しさをもちたいかと聞かれたら、やっぱりH係長のような優しさを持った人になりたいなと思います。
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